いびきの原因と対策
~今すぐできるセルフチェックと改善法~
最近家族からいびきの大きさを指摘された、などいびきで困っている方も多いと思います。「自分のいびきで目が覚めたことがある」という人もいるかもしれませんが、いびきは自覚しにくいため、指摘されないと気づかないことがほとんどです。
いびきは就寝中のうるさい音だけが問題だと思われることが多いですが、放っておくと重篤な合併症が発症したり、日常生活に支障をきたすこともあります。
いびきは多くの人が経験する問題ですが、その原因や影響についてはあまり知られていないことが多いです。本記事では、いびきの基本的な知識から、なぜいびきをかくのか、そしていびきを改善するための具体的な方法までを詳しく解説します。いびきの原因を理解し、適切な対処法を実践することで、質の高い睡眠を取り戻し、健康的な生活を送るための手助けとなると思います。
いびきとは何か
いびきは、睡眠中に気道が部分的に閉塞し、空気の流れが妨げられることで発生する音です。これは、喉や鼻の後部の組織が振動することで生じます。トランペットなどの管楽器の音が出るメカニズムとほぼ同じです。
いびきの原因は、咽頭(のど)が狭くなって、息を吸うときに狭くなった部分に空気が通過するため、のどが振動して音がでることです。特に眠ってしまうと、のどを支えている筋肉がゆるむため、よけいに咽頭が狭くなるのです。もともと日本人は、顎(あご)が小さい人が多く、肥満や飲酒や睡眠薬によっていびきが出現しやすくなります。いびきを引き起こす病気としては、咽頭扁桃(アデノイド)が腫れた場合や口蓋垂(のどちんこ)が大きい場合、かぜや鼻炎で鼻が詰まっている状態、鼻中隔彎曲(鼻の骨が曲がった状態)、極端な肥満、次の項で述べる睡眠時無呼吸症候群などがあります。本人は眠っているので気がつきませんが、一見熟睡しているようでも睡眠が不安定なため睡眠不足に陥っています。現在のところいびきは疾患として認められていませんが、慢性的ないびきは決して望ましい状態とはいえません。
いびきの種類と特徴
いびきには、軽度のいびきから重度のいびきまでさまざまな種類があります。
1. 単純性いびき
特徴: 一般的ないびきで、気道が部分的に狭くなることで発生します。特に健康に問題を引き起こすことは少なく、朝起きたときもすっきり目覚めていれば心配ありません。多くの場合、原因を取り除くことで解消できます。
ただし、毎日習慣的にいびきをかいている場合は、将来的に病気につながる可能性があるため注意が必要です。
原因: 肥満、アルコール摂取、喫煙、鼻詰まりなどが主な原因です。
2. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に伴ういびき
特徴: 睡眠中に気道が完全に閉塞し、一時的に呼吸が停止することで発生します。無呼吸エピソードの後に大きないびきが生じることが多いです。
原因: 肥満、扁桃肥大、下顎の後退などが原因で、気道が狭くなることによって発生します。
3. 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)に伴ういびき
特徴: 脳の呼吸中枢の異常により、呼吸が不規則になることで発生します。OSAとは異なり、気道の閉塞が原因ではありません。
原因: 心不全や脳卒中、薬物の影響などが原因となります。
4. 上気道抵抗症候群(UARS)に伴ういびき
特徴: 気道が完全に閉塞するわけではないものの、部分的に狭くなることで呼吸が困難になる状態です。UARSは睡眠時無呼吸症候群の予備軍ともいえます。口を開けて寝ることで起こることが多いいびきとともに、のどが渇いて夜に起きるなど睡眠の質が低下し、日中の眠気や疲労感を引き起こします。
原因: 肥満、鼻詰まり、アレルギーなどが原因です。
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴ういびき」だった場合、日中の眠気が生じたり、生活習慣病のリスクを高めることにもなりかねません。こちらで詳しく解説しています。
いびきの原因
いびきの主な原因は、空気の通り道である「上気道」が何らかの原因で狭くなることにあります。狭いところを空気が通ろうとすると空気抵抗が大きくなり、呼吸をしたときに粘膜が振動して音が生じます。この振動音が、「いびき」です。
いびきの原因には、疲労、肥満、鼻詰まり、アレルギー、アルコール摂取、喫煙、年齢、性別などが含まれます。これらの要因が組み合わさることで、気道が狭くなり、いびきが発生します。
疲労
疲れ切って眠ったときなど、舌が喉の方へと落ち込み、気道を塞ぎます。
肥満
肥満は、いびきの主要な原因の一つです。体重が増えると、首周りの脂肪が増え、気道が狭くなります。これにより、空気の流れが妨げられ、いびきが発生しやすくなります。
鼻詰まりやアレルギー
鼻詰まりやアレルギーは、鼻の通りを悪くし、口呼吸を促進します。口呼吸は、喉の筋肉を弛緩させ、いびきを引き起こす原因となります。アレルギー性鼻炎や風邪などがこれに該当します。
アルコールや薬物の影響
アルコールや一部の薬物(特に鎮静剤や睡眠薬)は、喉の筋肉を弛緩させるため、気道が狭くなりやすくなります。これにより、いびきが発生しやすくなります。
喫煙
喫煙は、喉や鼻の粘膜を刺激し、炎症を引き起こします。これにより、気道が狭くなり、いびきが発生しやすくなります。また、喫煙は睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクも高めます。
年齢
年齢を重ねると、喉や舌の筋肉が弛緩しやすくなります。これにより、気道が狭くなり、いびきが発生しやすくなります。特に中高年の男性に多く見られます。
性別
男性は女性よりもいびきをかきやすい傾向があります。これは、男性の気道が女性よりも狭く、また喉の筋肉が弛緩しやすいためです。
解剖学的要因
一部の人は、遺伝的に気道が狭い場合があります。例えば、扁桃肥大やアデノイドの肥大、下顎の後退などが原因で、気道が狭くなり、いびきを引き起こします。
睡眠姿勢
仰向けで寝ると、舌が喉の奥に落ち込み、気道を狭くすることがあります。これにより、いびきが発生しやすくなります。横向きで寝ることで、いびきを軽減できる場合があります。
これらの原因を理解することで、いびきの予防や改善に役立てることができます。生活習慣の見直しや適切な治療を受けることで、いびきの問題を軽減することが期待できます。
いびきの影響とリスク
いびきは、睡眠の質を低下させるだけでなく、日中の眠気や集中力の低下、高血圧、心疾患、糖尿病などのリスクを高めることがあります。また、いびきが原因でパートナーの睡眠にも影響を与えることがあります。重度のいびきでは重大なリスクになりえます。
いびきの影響
睡眠の質の低下
いびきは睡眠を断続的に中断させるため、深い睡眠が妨げられます。これにより、日中の眠気や疲労感が増加します。
高血圧
睡眠時無呼吸症候群(SAS)に伴ういびきは、血圧の上昇を引き起こし、高血圧のリスクを高めます。
心血管疾患
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを増加させます。いびきが続くことで、心臓や血管に負担がかかります。
糖尿病
睡眠不足や断続的な睡眠は、インスリン抵抗性を高め、糖尿病のリスクを増加させることがあります。
精神的健康
睡眠不足は、うつ病や不安障害のリスクを高めることがあります。いびきによる睡眠の質の低下が、精神的な健康にも影響を及ぼします。
重度のいびきのある方が起こりうるリスク
重大な被害を引き起こす可能性がある交通事故リスク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状に、日中の眠気があります。それによる最も大きなリスクが、居眠りや集中力の低下によるさまざまな事故です。
睡眠時無呼吸症候群の人が交通事故を起こす頻度は、健常者の約2.5倍といわれています。交通事故は、前述のように多くの人を巻き込む大事故に繋がり、本人のみならず社会全体に影響を与えるものとなります。
労働災害のリスク
交通事故ではなくとも、SASによる日中の眠気や倦怠感などにより、生産性や作業効率の低下・作業ミスなどを引き起こします。例えば、機械に体を挟まれて大ケガをするなどの労働災害を引き起こすリスクが高まります。
突然死のリスク
また、重症のSAS患者の死亡率は、健常者の約2.6倍といわれています。これは、無呼吸によって心血管系の合併症(心不全や急性心筋梗塞、脳梗塞など)を引き起こし、突然死のリスクが高まるためです。
いびきは単なる音の問題と考えられがちですが、実際には健康に重大な影響を及ぼすことがあります。いびきを軽視せず、適切な対策を講じることが重要です。
いびきは放っておいても大丈夫?
飲酒した時、あるいはかぜを引いた時だけいびきをかく場合は、おおむね心配ありません。しかし、病気が原因となっているときは、慢性的な睡眠不足となり生活に支障をきたすこともあり、いびきの原因となった病気を治す必要があります。特に、症状があったり、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群では日中の過度の眠気のため事故の危険があり、また、高血圧などの生活習慣病の原因や、悪化の原因にもなりますので、早めに診断と治療が必要です。
いびきのセルフチェック
自分がいびきをかいているかセルフチェック
いびきは無意識にかいているものであり、自覚するのは難しいでしょう。
ここでは、いびきをかいているかセルフチェックする方法を解説します。以下のチェックポイントに当てはまる方は、いびきをかいている可能性が高いため、チェックしてみましょう。
□眠りが浅いと感じている
いびきをかいていると、呼吸が浅くなり脳が覚醒することから眠りが浅いと感じます。
□しっかり寝たはずなのに昼間眠くなる
眠りが浅くなることから慢性的な睡眠不足に陥り、昼間に眠気を感じます。
□注意力や集中力が続かない
眠りが浅くなると、疲れが取れず集中力が続かなかったり、注意力が散漫になりやすかったりします。
□寝ても疲れが取れない
眠りが浅くなることから十分な休息が取れず、疲れが溜まります。いびきは睡眠の質が低下していると考えられます。
□鼻がつまりやすい
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻が詰まりやすい人は、鼻の奥が狭くなりやすく、いびきをかく原因になります。また、口呼吸になりやすいこともいびきの原因の一つです
□朝起きたときに口が乾いている
鼻詰まりなどで口呼吸していると、口が乾きます。口呼吸はいびきの原因の一つです。
□高血圧と診断されている
いびきをかいている場合は、体内の酸素量が減少しており、脳が酸素を確保しようと活動しており、心拍数や血圧が上昇して、寝ている間も血圧が高い状態が続くことになります。
そのため、高血圧と診断されている人は、いびきをかいている可能性が考えられます。
□肥満を指摘されている
いびきは気道が狭くなることで発生するため、肥満により脂肪で気道を圧迫していびきを起こしている可能性があります。
上記のいびきセルフチェックポイントが1つでも当てはまっている場合は、いびきをかいている可能性が高いですパートナーや家族に確認してみたり、録音して重症度をチェックしましょう。
いびきの重症度チェック
同じ部屋で寝ている家族やパートナーは、あなたのいびきを聞いている可能性が高く、確認してみるとよいでしょう。また、独り暮らしの場合は録音などで確認してみましょう。
□眠りが浅いと感じている
いびきをかいていると、呼吸が浅くなり脳が覚醒することから眠りが浅いと感じます。
いびきの頻度
いびきをかく頻度が週に何回か、毎晩かを確認します。頻度が高いほど重症度が高い可能性があります。
いびきの音量
いびきの音量が大きく、周囲の人に迷惑をかけるほどであれば、重症度が高い可能性があります。
無呼吸エピソード
睡眠中に呼吸が止まることがあるかどうかを確認します。無呼吸エピソードがある場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。
日中の眠気・集中力の低下
夜間の睡眠が断続的に中断されるため、日中に強い眠気や集中力や注意力が低下があれば、いびきにより自分が思っているより睡眠がとれておらず重症度が高い可能性があります。
朝の頭痛・口渇
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、、睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態で、これが繰り返されることで酸素不足が生じ、朝の頭痛を引き起こす可能性があります。
また、口呼吸が多くなるため、朝起きたときに口が乾いていることがあるかどうかを確認します。
セルフチェックで重症度が高そうな場合やいびきの詳しい検査をご希望の場合は、医療機関を受診して、自宅でできる簡易検査を受けることをお勧めします。受診の流れや簡易検査について詳しくはこちら
いびきを改善したい!いびき対策・治療法
1. ライフスタイルの改善
体重管理
肥満は気道を狭くし、いびきを引き起こしやすくします。適正な体重を維持することで、いびきの改善が期待できます。
アルコールと喫煙の制限
アルコールや喫煙は喉の筋肉を弛緩させ、いびきを悪化させることがあります。これらを控えることで改善が期待できます。
2. 睡眠環境の整備
寝姿勢の工夫
仰向けで寝るといびきをかきやすくなるため、横向きで寝るように工夫します。専用の枕やクッションを使うと効果的です。
湿度の調整
部屋の湿度を適切に保つことで、喉や鼻の乾燥を防ぎ、いびきを軽減できます。
3. エクササイズとストレッチ
喉の筋肉を鍛えるエクササイズ
喉の筋肉を強化することで、気道が狭くなるのを防ぎます。例えば、口を大きく開けて「アー」と発声する練習や、舌を前後に動かすエクササイズが効果的です。
4. 医療機関への相談
医療機関の受診
いびきが気になる場合や改善しない場合、日中の眠気が強い場合は、医療機関に相談することをお勧めします。簡易検査によって現在の睡眠について詳しく調べることが可能です。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に用いられる方法で、気道に持続的に空気を送り込むことで、無呼吸状態を防ぎます。
5. いびき対策グッズの使用
マウスピース・マウスガード
マウスピースをはめることで下あごを数ミリ前に出し、舌根を引き上げて気道を広げることができます。市販品もありますが、歯科医院では自分に合ったオーダーメイドのマウスピースを作ることができます。
鼻拡張テープ
鼻の通りを良くすることで、口呼吸を減らし、いびきを防ぎます。
いびき防止枕
頭や首の位置を調整することで、気道を確保し、いびきを軽減します。
いびき防止枕を選ぶ際には、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
- 1. 気道の確保
高さ: 枕の高さが適切であることが重要です。高すぎると気道が狭くなり、低すぎると首に負担がかかります。自分の体型や寝姿勢に合った高さを選びましょう。
形状: 頭や首をしっかり支える形状の枕を選ぶことで、気道を確保しやすくなります。特に、中央が凹んでいるタイプや、両サイドが高くなっているタイプが効果的です。 - 2. 素材
通気性: 通気性の良い素材を選ぶことで、寝ている間に熱がこもらず、快適な睡眠が得られます。
抗菌・防臭: 抗菌・防臭機能がある素材を選ぶと、清潔に保つことができます。特に、アレルギー性鼻炎の方には重要なポイントです。 - 3. 寝姿勢に合わせたデザイン
仰向け寝: 仰向けで寝る場合は、首の自然なカーブをサポートする枕が適しています。頭が沈み込みすぎないように注意しましょう。
横向き寝: 横向きで寝る場合は、肩幅に合わせて高さを調整できる枕が良いです。肩と首のラインがまっすぐになるようにサポートするデザインを選びましょう。 - 4. 調整可能な機能
高さ調整: 枕の高さを調整できるタイプは、自分に合った高さにカスタマイズできるため、より効果的です。
硬さ調整: 硬さを調整できる枕もあります。自分の好みに合わせて調整できると、快適な睡眠が得られます。
いびきが気になる場合や改善しない場合、日中の眠気が強いなどお気軽にご相談ください。
当院では内科外来でご相談を受け付けております。
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