HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種について

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HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種について

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種について

2023年4月よりHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン9価シルガード9が定期接種になりました。
健診会東京メディカルクリニックでも、より多くの方に接種していただくためにHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種を開始いたしました。
定期接種もご受診いただけます。※当院の定期接種は中学生以上となります。
定期接種の詳細については北区ホームページをご参照ください。

子宮頸がんは日本で年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡しており、特に50歳未満の若い世代での罹患が増加しています。
子宮頸がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因であり、自覚症状がないため、感染者が他の人に感染させるリスクがあります。
HPVワクチンは子宮頸がんやその他の関連疾患のリスクを低減する効果があります。日本では2価、4価、9価の3種類のHPVワクチンが承認されており、定期接種が行われています。
HPVワクチンの接種機会を逃した人にはキャッチアップ接種の制度があります。
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンを受けようと思っている方、受けるか悩んでいる方に向けて、HPV(ヒトパピローマウイルス)とワクチンについて詳しく解説していきます。

目次

  1. 子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)
  2. HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの種類
  3. HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの効果
  4. HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの安全性
  5. HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン よくある質問
  6. 定期接種以外の年齢(17歳以上)でワクチン接種を受けることはできますか?

子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)

日本における子宮頸がんの最近の動向

子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡しており、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあります。特に、他の年齢層に比較して50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっています。

子宮頸がん死亡者数
子宮頸がんの年齢階級別罹患率

日本産婦人科学会ホームページより

ヒトパピローマウイルス感染症とは

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は、ヒトパピローマウイルスと呼ばれるウイルスによって引き起こされる感染症です。HPVは性行為を通じて感染が広がることが一般的ですが、他の接触や垂直感染(母から子への感染)も起こり得ます。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計されています。性交渉を経験する年頃になれば、男女を問わず、多くの人々がHPVに感染します。そして、そのうち一部の女性が将来高度前がん病変や子宮頸がんを発症することになります。

HPVには100種以上の異なるタイプがありますが、一部のタイプは性器や肛門の粘膜に感染し、さまざまな疾患を引き起こす可能性があります。主な疾患には以下のようなものがあります:

  • 1. 子宮頸がん:子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。HPV感染は子宮頸部の細胞の異常成長を引き起こし、長期的には子宮頸がんのリスクを高める可能性があります。
  • 2. 尖圭(せんけい)コンジローマ:一部のHPVタイプは性器や肛門の皮膚に突起物(イボ)を形成することがあります。これは性行為によって広がり、しばしば性的パートナー間で感染が相互になされます。
  • 3. その他のがん:一部のHPVタイプは他のがんのリスクも高める可能性があります。これには陰茎、膣、外陰部、肛門、口腔や喉頭がんが含まれます。

HPV感染は多くの場合、自覚症状がないため、感染者が無意識のうちに他の人に感染させるリスクがあります。しかし、HPVワクチンの接種や定期的な検診によって、感染や関連疾患のリスクを低減することができます。
子宮頸がんでは、原因であるHPVに感染しないことによってがんにならないようにワクチンを接種することすること(1次予防)と、がん検診によるスクリーニングでがんを早期発見・早期治療し、結果的に子宮頸がんによる死亡を予防すること(2次予防)ができます。
このように子宮頸がんは、最も予防しやすいがんであり、がん予防の知識が大切となる病気です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの種類

国内で承認されているHPVワクチンには2価、4価、9価の3種類があります。
2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型に対するワクチンです。
4価ワクチンは16/18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6/11型の4つの型に対するワクチンです。
9価HPVワクチンは、さらに5つの型(31/33/45/52/58型)が予防対象になります。
これらワクチンはHPVの感染を予防するもので、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。
したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。現在世界の80カ国以上において、HPVワクチンの国の公費助成によるプログラムが実施されています。

価数
ワクチン名
接種回数および接種間隔 予防するVPD 対象
9価
シルガード9
●初回接種が15歳未満の場合
2回接種:初回から5か月以上(標準的には6か月)あけて2回目。
3回接種:初回から1か月以上5か月未満(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
●初回接種が15歳以上の場合
3回接種:初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
90%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型)、尖圭コンジローマ(6型、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の女子
4価
ガーダシル
初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目、2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。 70%の子宮頸がん・肛門がん (16、18型) 、尖圭コンジローマ(6、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の男女
2価
サーバリックス
初回から1か月以上(標準的には1か月)あけて2回目、2回目から2.5か月以上(標準的には5か月)かつ1回目から5か月以上あけて3回目。 70%の子宮頸がん(16、18型)などのヒトパピローマウイルス感染症 10歳以上の
女子

日本では、サーバリックスが2009年12月に、ガーダシルが2011年8月に発売され、2013年度から定期接種になりました。
9価シルガード9は2021年2月に発売され、2023年4月から定期接種になりました。
定期接種の詳細については北区ホームページをご参照ください。

当院で接種する場合の料金(自費診療)

項目 料金
4価(ガーダシル)ワクチン 16,500円/1回
9価(シルガード9)ワクチン 28,600円/1回

HPVワクチン接種機会を逃した人のキャッチアップ接種

1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女性は、2022年4月から2025年3月までの3年間、定期接種としてHPVワクチンを無料で受けられます。
また、2022年3月までに自費でワクチンを受けた人に対して接種費用を払い戻す制度があります。対象者、申請方法、償還額、申請期間は自治体ごとに異なる場合があります。
詳しくは、お住いの自治体にお問い合わせください。
北区のキャッチアップ接種の詳細はこちら

HPVワクチン接種おすすめの受け方

できるだけ早く9価ワクチンの2回接種を受けましょう。
遅くとも15歳になる前に9価ワクチンの初回接種を受けましょう。

HPVワクチン接種後の注意

副作用として受けたところの痛み、局所反応があります。接種時の痛さはほかのワクチンと大きく変わらないとされますが、数日間にわたり筋肉痛がおこることがあります。

このワクチンは血管迷走神経反射(失神)を起こすことがあります。
これはワクチンが痛いためでなく、ワクチンが痛いのではないかと緊張したり、その緊張が解けたりしたときに起こります。
10歳以上の女性は、ワクチン接種(種類は問いません)だけでなく血液検査や献血でも失神を起こす人がいます。
緊張しやすい人は接種前に接種医に申し出て、寝た姿勢のままで受けるなど30分程度はしっかり落ち着くまで接種した医療施設で横になるのも良いことです。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの効果

いずれのワクチンもワクチンに含まれているタイプのHPV感染症を防ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防します。また、がんになりやすい16、18型のHPVは、若年者に多いといわれています。初めての性交渉の前までに受けることで予防効果が高まります。
実際に、スウェーデンの報告では、17歳未満のワクチン接種で子宮頸がんリスクが88%減少しました。英国では、12-13歳のワクチン接種で87%減少しました。

ワクチンの種類によって効果のあるウイルスの型が異なり、予防できる病気が変わります。
サーバリックス、ガーダシルは、ともに約70%の子宮頸がんを予防し、効果は20年くらい続くとされています。
シルガード9は、約90%の子宮頸がんを予防できます。
日本より7~8年前からワクチン接種をはじめた欧米やオーストラリアでは、ワクチンの有効性が報告され、子宮頸がんが減少しています。
また、ガーダシルは肛門がんと尖圭コンジローマを、シルガード9も尖圭コンジローマを予防できます。

定期接種世代での浸潤子宮頸がん予防効果

日本産婦人科学会ホームページより

一方、国内においても複数のHPVワクチンの有効性についての研究が進行中です。新潟県で行われている研究では、ワクチンを接種した20歳~22歳の女性においてHPV16型と18型(HPVワクチンによる効果が期待される型)に感染している割合が有意に低下していることがすでに示されています。

HPV-16、18型に対する子宮頸がんワクチンの効果

日本産婦人科学会ホームページより

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの安全性

これまでに行われたHPVワクチンに関する多くの臨床研究を統合解析したコクランレビューでは、HPVワクチン接種によって短期的な局所反応(接種部位の反応)は増加するものの、全身的な事象や重篤な副反応は増加しないと報告されています。
世界保健機関(WHO)も世界中の最新データを継続的に評価し、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題は見つかっていないと発表しています。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン よくある質問

HPVワクチンの定期接種は、なぜ小学校6年生から高校1年生(12~16歳)までなのですか?

ワクチンは感染を受ける前に接種しなければ意味がありません。
子宮頸がんを引き起こすHPVは性行為を通じて感染が広がることが一般的です。
日本人女性を対象にした研究で、HPV16型、18型感染の予防効果は、初回性交渉の前にHPVワクチンの接種を受けた人では、約94%であることが報告されています。
もう一つ考えなければいけないのが、ワクチンの効果がどのくらい持続するかということです。
効果が持続する期間はワクチンの種類によって異なる可能性がありますが、これまでの報告では4価HPVワクチンで最長14年間持続するとされています。この期間には個人差もあり、この年数を越えたら必ず効果がなくなるというわけではありません。
12~16歳で接種を受けると、26~30歳まではワクチンの効果が持続すると考えられるため、この年齢を対象に定期接種が行われています。

ワクチン接種による副反応としてどのようなことを考えておくと良いですか?

HPVワクチン接種後の女子に見られた広範な慢性の体の痛みや運動障害を中心とする様々な症状がメディアで繰り返し報道されました。
その後の調査により、HPVワクチンそのものが原因となった可能性は否定的と考えられ、また、これまでに報告されている重い症状がすべて副反応であると仮定しても、その確率はHPVワクチンを1万回接種した場合に1件以下の頻度であり、極めてまれと言えます。
ただし、これらの症状がすべて副反応である可能性が否定されたわけではなく、接種に伴う痛みや接種前後のストレスが、このような症状を引き起こすきっかけになることもあると考えられています。
接種後に心配な症状がある場合には、まず、接種を受けた医療機関をご相談ください。

年齢によって9価ワクチン(シルガード9)の接種回数が異なるのはなぜですか?

シルガード9を合計2回の接種で完了する用法については、9~14歳の女性を対象に臨床試験が行われ、効果と安全性が確認されたうえで薬事承認がなされており、シルガード9を2回接種した9~14歳の方における効果は、3回接種した方と比べて、劣ってはいないことが報告されています。また、米国やカナダ、オーストラリアなどの諸外国では、原則、15歳になるまでに1回目の接種を終えていれば、2回で接種完了としています。

これらの背景から、15歳になるまでに1回目の接種を行った方は、2回で接種を完了できることとしています。なお、シルガード9を含め、HPVワクチンの定期接種は小学校6年~高校1年相当の女子が対象であり、標準的な接種期間は、中学校1年(13歳になる学年)の女子となっています。

9価ワクチン(シルガード9)で1回目または2回目の接種を受けてから1年以上経ってしまいました。次の接種はどうすればよいですか?

接種間隔が数年以上あいた後にシルガード9を接種した場合においても、一定程度の効果と安全性が示されています。
また、海外の保健当局においても、規定の間隔から外れてしまった場合でも接種をやり直す必要はないとされています。 十分な予防効果を得るためには 、規定の回数を完了させることが大切ですので、できるだけ早めに残りの接種を受けるようにしてください。

2価ワクチン(サーバリックス)または4価ワクチン(ガーダシル)を接種すると、9価ワクチン(シルガード9)は接種できないのですか?

○サーバリックスまたはガーダシルで規定の回数(3回)接種が完了している場合
世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)は、シルガード9の追加の接種を推奨していません。これは、サーバリックスまたはガーダシルでも、子宮頸がんに最も関与の強い型であるHPV16/18型(※)の感染予防に効果があることや、異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性についてのデータが限られていることからです。
(※)HPV16/18型が子宮頸がんの原因の50~70%を占めます。

○サーバリックスまたはガーダシルを1回または2回接種している場合
原則として同じ種類のワクチンを接種することをお勧めしますが、医師と相談のうえ、途中からシルガード9に変更し、残りの接種を完了させることができます。
この場合も定期接種の対象となります。また、キャッチアップ接種の対象の方も、途中からシルガード9に変更し、残りの接種を完了させることができます(※)。
なお、サーバリックスまたはガーダシルで接種を開始し、定期接種としてシルガード9で接種を完了させる場合は、シルガード9の接種方法にあわせ、1回目と2回目の間隔を1か月以上、2回目と3回目の間隔を3か月以上あけて接種します。
(※)異なる種類のワクチンを接種した場合の効果と安全性についてのデータは限られています。

定期接種以外の年齢(17歳以上)でワクチン接種できますか?
その効果はどうですか?また、何歳まで接種できますか?

できます。HPVワクチン接種を定期接種の対象年齢(12~16歳)で受けることができなかった人でも、その後にワクチンを接種することによって一定の効果が得られると報告されています。
17~30歳では17歳以前に比べれば効果は低いものの、有効であると認められます。
海外の報告では、45歳までの接種はHPVワクチンの効果が認められており、アメリカでは女性に対して26歳までの接種を推奨しています。
27〜45歳の女性では、HPV16、18型に関連した子宮頸がんの前がん病変に対するHPVワクチンによる予防効果は証明されていますが、年齢が高くなるほどワクチンで防げるHPVの型にすでに感染している可能性が高まります。
このため、27歳から45歳でHPVワクチンを接種していない人は、医師との相談の上で接種を検討することが勧められています。
子宮頸がんの大半は20~40代のため、日本では46歳以上の方の接種は推奨しないとされています。

HPVワクチンを摂取したら、今後の子宮頸がんの検診は受けなくてよいですか?

HPVワクチンの予防効果は高いものの、100%ではありません
HPVワクチンは、4価のものではハイリスクHPVの60-70%、9価のものでは90%程度(日本人の場合)の感染を予防すると考えられており、非常に有効な予防手段です。
ワクチン接種に加え、子宮頸がん検診で「前がん病変」を早期に見つけることが大切です
ワクチン接種で子宮頸がん発症のリスクを大きく減らせることは確かですが、残念ながら100%予防できるわけではないため、「早期発見」への工夫を組み合わせることが大事になってきます。
WHOは、検診とワクチンを組み合わせることにより、それぞれの欠点を相互に補填しあうことで、より効果的な子宮頸がんの予防を目指しています。
90%の女子へのHPVワクチン接種、70%の女性が適切に生涯で少なくとも2回の検診を受け得ること、90%の子宮頸部の病気になった女性が適切なケアを受けることで、今世紀中に子宮頸がんは排除が可能であるとのシミュレーションがなされています。

子宮頸がん排除のための構造
2030年にHPVワクチン、子宮頸がん検診、子宮頸がん治療のそれぞれの介入が、増加した場合の変化

日本産婦人科学会ホームページより

男性もHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を接種したほうがいいの?

2020年12月から4価HPVワクチン(ガーダシル)の男性への任意接種が承認されました。
HPV感染は、女性特有の子宮頸がんや外陰がんだけでなく、肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんにも関与するとされています。

パートナーを守ることにつながる

HPV感染は性交渉によって男女間で感染を繰り返すため、男女にワクチン接種をすることで感染の広がりを抑えることができます。 本人のHPV感染による病気の予防だけでなく、自分が感染源とならないためでもあります。

男性の疾患も予防可能

男性が接種すべき理由のもう一つは、性感染症である尖圭コンジローマを予防することです。尖圭コンジローマは、発症してしまうと性感染症の中でも精神的ストレスの強い感染症です。また、発症すれば根治は困難で再発を繰り返してしまいます。 ガーダシルは男性に対しても尖圭コンジローマへの高い予防効果が示されており、海外では男性に対しても接種が推奨されています。また、HPVは子宮頸がんだけでなく、男性に多い咽頭がんや肛門がん、直腸がん、陰茎がんの原因となることが分かっており、これらのがんの発症を予防することも示されています。

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