胃がんの原因の99%はピロリ菌感染が関係している
胃がんとは
胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序にふえていくことにより発生します。がんが大きくなるにしたがい、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)へと外側に深く進んでいきます。がんがより深く進むと、漿膜の外側まで達して、近くにある大腸や膵臓(すいぞう)にも広がっていきます。このようにがんが周囲に広がっていくことを浸潤(しんじゅん)といいます。
胃がんでは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って、離れた臓器でとどまってふえる転移が起こることがあります。また、漿膜の外側を越えて、おなかの中にがん細胞が散らばる腹膜播種(ふくまくはしゅ)が起こることがあります。
胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がっていくタイプがあり、これをスキルス胃がんといいます。早期のスキルス胃がんは内視鏡検査で見つけることが難しいことから、症状があらわれて見つかったときには進行していることが多く、治りにくいがんです。
胃がんの症状
胃がんは、早い段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合があります。
代表的な症状は、胃(みぞおち)の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、胃がんから出血することによって起こる貧血や黒い便が発見のきっかけになる場合もあります。
しかし、これらは胃がんだけにみられる症状ではなく、胃炎や胃潰瘍(いかいよう)の場合でも起こります。胃炎や胃潰瘍などの治療で内視鏡検査を行ったときに偶然に胃がんが見つかることもあります。
胃がんの原因
ヘリコバクター・ピロリ菌への感染
ヘリコバクター・ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると、胃の粘膜に胃炎を引き起こします。感染の持続により、胃粘膜に慢性的に胃炎が起こっている状態になり、遺伝子異常を起こし胃がんになると考えられています。
胃がんの原因の99%はピロリ菌の感染が関係しているといわれています
一度もピロリ菌感染の検査をしたことのない人は、ABC検査(ピロリ菌抗体検査+ペプシノゲン検査)を受けてみましょう。
直接胃がんの有無を調べる検査ではありませんが、下記のような検査により胃がんのリスクを調べることができます。
ペプシノゲン検査
血液検査でペプシノゲンの量を測定することで萎縮性胃炎を発見する検査です。
胃がんになる前に多くみられる萎縮性胃炎という病態を見つける検査であり、直接胃がんの有無を検査する方法ではありません。罹患するリスクを判定するための検査です。
ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査
血液検査によって、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査です。
ピロリ菌に感染した人すべてが胃がんになるわけではありませんが、胃がんになった日本人の多くからピロリ菌が発見され、胃がんや胃潰瘍との関係が指摘されています。
胃がんの有無を直接検査する方法ではなく、罹患するリスクを判定するための検査です。
喫煙
タバコに含まれる有害物質が胃の粘膜を刺激することがよくないといわれています。
食生活
塩分や香辛料の多い食品、熱い食べ物の過剰摂取、野菜や果物の摂取不足が指摘されています。
アルコールは適量であれば問題ありませんが、過剰な飲酒は胃に負担をかけてしまします。
ピロリ菌は成人も感染する?
ピロリ菌の感染経路はまだはっきりはしていませんが、免疫力の弱い時期(5歳まで)に感染すると考えられています。これまでのところ、井戸水と幼児期の食べ物の口移しによるものが多いと考えられています。
最近では、成人になってからの感染はない(菌が入ってきても感染する前に除去される)とされていますので、子供のためにも親世代がピロリ菌感染の有無を確認して、感染があれば除菌することが重要と考えられます。
日本人のヘリコバクター・ピロリ菌の感染率は中高年で高く、若年層では近年低下傾向にあります。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した人の全てが胃がんになるわけではありませんが、現在、除菌療法が胃がんのリスクを低くするという研究結果が集積されつつあり、感染していることがわかれば除菌療法が推奨され、定期的な胃の検診を受けることが推奨されています。
胃の検査
胃部エックス線検査(バリウム検査)
発泡剤(胃を膨らませるお薬)とバリウムを服用していただき、胃の形や粘膜などの状態や変化をX線写真で確認する検査です。
胃部内視鏡検査
胃の内視鏡検査では、胃がんの早期発見はもちろんのこと、胃がんの原因となる胃炎や粘膜の萎縮を早期に発見し、治療することを目的としています。
内視鏡が通過する食道・胃・十二指腸をすべて観察することができるので、胃がんだけでなく食道がんや十二指腸がんなどが発見されることもありますし、逆流性食道炎などがん以外の疾患が見つかることもあります。
ピロリ菌除菌後のかたは、年に一度の内視鏡検査が推奨されます。
当院の内視鏡検査の特長についてはこちらをご確認ください。
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